人類は大陸東岸の孤島、日本列島に辿り着き、雨、風、冬の寒さを避けるため、自然の横穴に休息したであろう。糧を求め移動し、平野部で屋根のある住まいを作り出した。材料には自然に自生する草、または木の葉を使用したのは当然のこと。長きにわたり茅葺きは形態を進化させながら現在に至った。

日本の農村風景を代表する茅葺き屋根の民家。その懐かしくも温もりのある風景も次第に姿を消しつつある。わたくしは会社の研修旅行等で車中から茅葺があるとバスを止めてもらい写真に記録していた。

全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存が図られるようになったが、一方で茅葺きの維持ができずに、朽ちたり、トタン葺きに替わる住居を目の当たりにし、残念と思っていたが何もできなかった。

退職後、現在残っている茅葺の建築を探し、できれば写真として記録として残したいとの思いに至った。茅葺きがどの程度残っているかインターネット、文献、新聞、テレビ等で調べた。

一番確実だったのはGoogle Earthで上空からの映像を拡大して見ることだった。北は北海道・旭川から南は鹿児島・知覧まで旅をし、2018年末現在、3900棟あまりをリストアップし、1800棟を写真に収めた。

写真を撮りだして10年が過ぎた。すでに100棟近くが消えた。対照的に素晴らしい茅葺が現存している。その美しい日本の原風景といえる茅葺きを写真集として出版することにした。

各地でかやぶき保存会が存在している。こうした保存会と連携して、茅葺きを保存し、また写真やデータとして残す活動をしていきたい。また、茅葺きに関する写真コンテストや写真展の企画も行いたい。

将来的にはこれまでに撮り溜めてきた写真データや位置情報を、広く一般に公開したいと考えている。願わくばGoogle maps APIなどのGoogleサービスと連携したベースベースとしての活用を模索している。